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シンクの証明

社会

おれは追い詰めたあいつを・・・

黒くて油光りするあいつだ。人類より遥か昔から跋扈していたあいつだ。すばやしこく、カサカサと逃げ回るあいつだ。

殺虫剤は生憎と切らしていた。新聞紙を丸めて叩き潰そうと思ったが、高級なイスファハン*1の絨毯が汚くなるので無理だった。とにかく、台所のシンク*2に追いこむしか手はなさそうだった。

いま、奴はシンクの中にじっとしていた。来る展開を待ち構えているようだった。ギザギザった足、ピンと伸びた触角、一秒たりとも見ちゃいられない!俺は蛇口を勢いよく捻った。全開だ。

たちまち、ステンレス製のシンクは水で溢れた。奴は気持ちよさそうに泳いでいるようだった。だが、それも束の間だ、オレは固形石鹸を1つ取った。包装紙を破き、シンクの中に放り込んだ。

泡の海、バブルってやつだ。それにまみれて奴は沈んでいきやがった。栓を抜いて、泡の海ごと下水へと流されていった。おかげでシンクはピカピカだ。

今日はいい仕事をしたな

 

 

*1:イランの都市、ペルシャ絨毯の産地として有名

*2:流し台のこと

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