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県知事、退職、その後・・・

政治

僕は、ある達成感に包まれていたことを告白しなければならない。四国地方の県知事を2期8年勤めた。

 

当初の目標だった課題に概ね、目途がつき、後継の次期知事も意中の候補が当選し、僕の路線を継いでくれるだろう。

とはいえ、まだ50代半ばだ。さて、これから残りの人生をどう歩いて行こうか。やはり、生まれ故郷のここに留まり骨を埋めるべきか?それとも、知事になるまで20数年暮らしていた東京に戻るべきか?

個人的には、ここの環境が気に入っていたし、ここで暮らすのもいいじゃないかと考えていた。

だが、妻と娘は大反対だった。

「冗談じゃないわよ!あなた、前に言ってたじゃないの!いずれ、東京に戻るって!」

「ママのいう通りだよ。こんなとこ、長くいるもんじゃないよ!」

このままでは、僕一人、ここに取り残されそうな気配である。それは、あまりにも寂しいではないか。

そこへ、県立大学の学長が訪ねてきた。

「え?僕に教授になってもらいたいと?」

「はい、あなたみたいな有能な人こそ、わが県は必要としてるのです!いいですか?御多分に漏れず、ここも人口減少が酷いのです。どんどん、東京にチューチュー吸い取られてるんです!」

「はあ・・・まあ、せっかくのお話ですが、実は家族が反対してましてね」

「じゃ、東京に行っちゃうの?」

「いや、まだ、はっきりそうと決めたわけじゃないんですけど・・・」

「おい、あんたを知事にしてやったの、誰だと思ってんだ!」

「!・・・え?いやあ、それは・・・」

「俺だよ。今までの恩を仇で返すつもりかね?」

「ちょっと待ってくださいよ!それじゃ脅迫じゃないですか~」

「何とでも言え。俺はな、何としてもこの県を復活させたいんだ!東京にこのまま、コテンパンにやられっぱなしなんて、我慢できんのだ!」

結局、あまりの強引さに憤慨し、申し出を拒否した。

答えは決まったな。

これだから地方は嫌なんだ。閉鎖的なのだ。恩着せがましいのだ。

それでも、自然の素晴らしさには代えがたいものがあるのだが・・・ま、年に一回帰省すればいいかw

こうして、僕ら一家は東京に戻ることになった。

夕闇迫る空港、羽田行きのファーストクラス。僕はワイングラスを傾けながら、赤や青に点滅する夜景を眺めていた。

「あなた、後悔してるんじゃなくて?」

「とんでもないw君のお父さんのお蔭で、慶大の仕事も見つかったしな」

「うふふ。・・・でも、これから、この県はどうなっちゃうのかしらね?」

「さあね、彼らなりに、ない頭を絞って何とかするんじゃないの」

「あら、随分と冷たいじゃない?ついこないだまで、ここに残るって言ってたの、どこのどなたでしたっけw」

飛行機は夜空に溶け込むように飛び、消えた。

 

ラバーマスク M2 県知事

ラバーマスク M2 県知事

 

 

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