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和歌山のパンダは、ただのパンダ!?

地理

俺は国営放送のディレクターだ。夜7時のニュース編成を担当している。この仕事はハードだが、世の中を動かしてるっていう快感はハンパないねw

 

だって、俺の胸先三寸で、そのニュース番組のトップ項目が決まるんだぜwそれでさ、何千万人もの国民が思うわけだろ?ああ、これが今一番の、つまり重要なニュースなんだってね。

まあ、世論誘導て言葉は好きじゃないけどさ、多くの国民は仕事や生活に追われてて、空っぽだからな。そこに「充填」してやんないとなw

「チーフ!和歌山でパンダの赤ちゃんが生まれたそうです!」

アシスタントの英樹が、嬉しそうに言った。

夕方の編成会議、何十人ものスタッフやキャスターが集っている。周りにも、せわしなく動き回るスタッフたちがいる。そして何十台ものモニターに調整卓、確かにここは「戦場」だった。

「すごーい、可愛いね!」

女キャスターの明美が、40代とは思えないはしゃぎっぷりで、モバイルデバイスの画面を見ている。あいつは、和歌山出身だったな・・・

「う~ん、悪くはないが、トップには使えんよ。天気コーナー直前に、20秒くらいで挟むかな」

英樹の表情が曇った。

「え~、だって双子の赤ちゃんでしょ?扱い、悪すぎ!」

明美が、明らかに不満そうな感じで言う。

「いやいや、あんたのイナカってのは、重々承知してるけどさ、やっぱな、インパクトがさ・・・」

「えっ?インパクトありすぎじゃんwだって双子だよ?上野だったらどうなる?」

「そりゃ~大騒ぎですよねw」

英樹が皮肉を込めたニュアンスで言った。

こいつら、何もわかっちゃいないと思う。人口がそもそも段違いだ。関東だけで4千万人!実に、全人口の三分の一を占める。

しかも、視聴率的にも絶対に外せないセグメントだった。国営放送とはいえ、昨今は経営上、重視されるようになってきた。

「うむ、申し訳ないが、和歌山では遠いんだよな・・・」

「遠いって、東京から?それっておかしくない?全国放送でしょ!」

明美が、ヒートアップしてきた。・・・ったく、只でさえ時間がないのに、こんな話題で・・・

「理屈はそうだがね・・・」

「事件事故とか災害とか、そういうのしか、地方の価値はないってワケなんだ」

「それはおかしいっすよ!偏向してますよ~」

英樹が調子に乗ってきた。

「あのな、ド田舎の原っぱにモナリザを飾っても、誰も見に来ないだろ?都会の美術館に展示されてな、初めて価値が出るんだ。パンダも確かに貴重なコンテンツだが、それも置かれてる場所次第なんだよ」

そう説得して、何とかその場を収めた。

やれやれ・・・ポリティカルコレクトネスならぬ「リージョンコレクトネス」か・・・窮屈な世の中になったもんだ。

 

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