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薬剤師ほどラクな商売はない

ぼくは、ライオンの薬剤師だ。ライオンていうのは、字義通りの意味で、人間ではないってこと。

 

大病院の薬局に勤めてるけど、この病院には、ゾウの外科医もいればウサギのレントゲン技師もいるんだ。

もちろん、人間もいるよ。院長先生とか上層部に多いね。

まあ、表向きはね、動物も人間も仲良くやってるけど、裏では、差別とかやっぱりあるよね。

時には、無理難題の世話を要求されて、ムカつくから、ワニの看護婦がシカの患者を食べちゃったとかあるんだ。昔の習性は中々治せないからねw

かくいうぼくも、腹が減ってくると、目の前の動物や人間にかぶりつきたくなることもあるなw

そん時は、急いで、ガムを噛むことにしてるんだ。大抵は、それで収まるよ。やっぱ、ぼくら「キャリア動物」は文明の仕様に合わせないとね、野生の証明はいらないんだ。

とにかく、ここは天国みたいな職場だよ。若いメスは多いし、調剤は機械がやってくれるしねw

 


でも、こういうこともあるから、気を付けないといけないね。

 


薬歴は重要な情報じゃないか。うちでは、考えられないよ!

さあてと、昼休みも終わったし、仕事に戻るかな・・・うん?院長先生が深刻な顔で腕組をしているぞ。

「ライオンくん!君はここのチーフだろ!昨日のな、キリンさんに出した薬でな、お腹を壊してしまったそうだ」

「え、マジっすか?」

「そうだ。誰が調剤したんだ?」

十数人の若いメスたちは、ぼくに鋭い視線を向ける。やべえ、やっちまった!でも、大したことはないだろ?

「・・・ああ、それ、俺っす・・・」

「あ?君かよ・・・初歩的ミスだぞ!」

 

一時間後、メスヤギの薬剤師助手は、同僚のメスクマに言った。

「あいつ、クビになるんじゃね?」

「どうだろ?キリンさん、一週間の入院らしいけど・・・」

「でもさ、下痢が酷くてトイレに籠りっぱなしみたいだよw」

「あちゃ~あのキリンさんてさあ、どっかの議員の息子でしょ?」

「そうみたい。だから、これから院長先生と理事長が平謝りに行くらしいよ」

 

「君たち、約束の時間をとうに過ぎてるんだぞ!わしはな、首を長くして、お前らが謝りに来るの、待っておったんだ!」

ぼくは、院長先生と理事長と一諸に、キリンさんの父親の議員さん宅にいた。みんな、土下座スタイルで謝ったが許してくれない。

「誠に申し訳ありません。これは詰まらないものですが・・・」

理事長は、果物の一杯入ったカゴを、目の前の大理石のテーブルに置いた。

「こんなもんで、わしを誤魔化せると思っとるのかね!今度の議会で追及してやる!」

ぼくは、たまらなかった。薬剤師はラクな仕事だと思ってたのに・・・野生のライオンより遥かにオイシイと思ってたのに・・・そうでもないみたい。

もう、こうなったらキャリアは絶望的だ、野生に戻るしかない。そう決意すると、行動は早かった。

その場にいた、一匹のキリンと二匹の人間を平らげ、悠々とアフリカの大自然に里帰りしたのだった。

 

薬剤師の新・幸福論

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