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帝銀事件と三菱銀人質事件・後編

前編はこちらから。

 


 

トイレを済ませたぼくは、戻ると、くだんの美人コンシェルジェが置いてったらしい、ジンジャーエールとサンドイッチをサイドテーブルに認めた。

うん?客がいない時は出直すのが常識だろと、微かに不満を覚えたが、あんな美人サンだ、そういう不手際もあるだろうと黙認した。

カプセルチェアに座り、サンドイッチを食べた。何でも、一流ホテルのシェフが作ったそうだが、そこまでの味はしない。

・・・よし、腹も満足したし、いよいよお楽しみの時間だw

ヘッドギアを頭につけ、横たわる。スイッチを押すと、上蓋が締まり、暗闇に覆われる。

この装置は、直接、脳に映像を届ける仕組みになっている。だから、目を閉じても開いててもいいのだが、大体は閉じてる人が多いようだ。

その時に、眠ってしまわないか不安になるが、特殊な信号を覚醒神経に送るそうで、問題はない。

目を閉じると、調整画面が浮かび上がってきた。ここからは、疑似的なCGの「手」で操作することになる。

さて、血の量だが、少なめにしとこう。ヌード描写もモザイク処理だ。こんな内容で、そうした描写を楽しむ趣味はないからな。

よし、スタートだ。制作会社のロゴが出た後、注意書きが表示された。

 

このコンテンツは、可能な限り、当時の状況を再現いたしましたが、一部、創作も含まれています・・・

 

まずは、帝銀事件を選択する。すると、1948年1月26日の東京に放り込まれた。

大体、半径100メートル以内で自由に動ける。空を飛ぶことも自在だし、どんどん屋内にも入っていける。つまりは、透明人間みたいなものだ。

今は、舞台だけで、人間も乗り物などもいない。

では、再現ドラマをスタートさせよう。声に出すと、インターフェイスの画面が空中に浮かんだ。再生ボタンを押す。

午後三時過ぎ、椎名町支店。オーバー姿の男が来た。顔は、あの死刑囚のではない。色々と不明確なので、ぼかしているのだろう。被害者側もプライバシーの関係で全員、架空のキャラである。

それからの30分、ナレーターの不気味な声で進行するが、身の毛もよだつ体験だった。

次の三菱銀は、もっと凄惨な犯行なので、より衝撃的だった。

犯行現場の行内だけでなく、外の警察やマスコミの動きも、極力、資料から当たって再現しているので、同時進行で動く状況がリアルに体験できた。

もちろん、一時停止や巻き戻しも自由にできるので、例えば、ラストの射殺シーンも、両方の場所で見ることができた。

制限時間の1時間が過ぎると、追加課金の表示が出る。

もう堪能したので、終了を選択。映像が消えて、チェア内のライトが点灯する。眩しいな・・・

受付でカードを提示し、店を出た。

VR・・・舞台でも映画でもゲームでもない、特異な虚構上の‘リアル‘。

すごい時代になったもんだと思いながら、愛車のランボルギーニのエンジンを始動させたのだった。

 

三菱銀行事件の42時間 (新風舎文庫)

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